――あなたが泣くと悲しかった。
あなたの泣き顔すら好きだと思った。
――あなたが安らかであるように願った。
そのためなら何だってしていいと思った。
世界はひどく美しくなった。
いたいよう
いたいよう。
どうしてかなあ
ねぇ、
おばさま、
おかあさんは、どうして、せせりのことぶつの?
せせりは、おかあさん、すきだけど
おかあさんは、ちがうの?
いたいよう。
いたい、
……いたいよう……。
おかあさんは、せせりのこと、ばけものだっていうよ。
せせり、ばけもの、なの?
きっと、そうだよね。
おかあさんは、うそなんていわないよね。
せせりがばけものだから、みんなせせりのこと、きらいなんだね。
おかあさんと、おんなじいろがよかったな。
みんなと、おんなじいろがよかったな。
……どうしてせせりだけ、ゆびがくずれるの?
おばさま。
おばさま?
なかないで。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
なかないで。
せせりがわるいことしたから、ないてるんでしょう?
※
あのね、おばさま、きいて
せせりね、ひとつ、わかったの、わかったことがあるの
おじいさまも、おかあさんも、せせりをぶつけど
おじいさまはおこって、ぶつの
せせりがそばにいくとおこるの。
でもね、でもね、
おかあさんは、ないてくれるの
せせりをぶつとき、ほんとうはないてくれてるの
なみだがでないけど、ないてくれてるの
きょう、わかったの。
おばさま、
あのね、
ないしょにしてね。
せせりは、おかあさん、すき。
おかあさん、やっぱり、やさしいから、すき。
だからね、だから、
ばけものってなにか、わからないけど、たぶん、せせりのことなんだよね?
だから、
せせりは、おかあさん、すきだから
おかあさんが、ないてくれるの、うれしいから
はやくなきやんでほしいなあって、おもうから、
だから――
――うん。
――いいの。
――だいじょうぶだよ。
――いたく、ないよ。
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